遅刻常習犯の怒り方と叱り方~心理学に基づく遅刻の理由と言い訳~

遅刻常習犯の怒り方と叱り方~心理学に基づく遅刻の理由と言い訳~

Twitterで遅刻常習犯と時間厳守派による「お願い」合戦が話題になっています。遅刻常習犯の遅刻の原因と叱り方について詳しく調べてみました。

遅刻の原因

遅刻の原因は主に4つあります。「マルチタスク」、「計画の錯誤」、「体内時計のズレ」、「タイプBの性格」です。

マルチタスク

2003年にニューヨーク市地下鉄の労働者を対象に行われた研究で、マルチタスクをこなす人はシングルタスクだけをこなす人よりも、仕事に遅れることが多いことが明らかになっています。それではマルチタスクとシングルタスクとは何でしょうか?

まず一つ目のタスクを終わらせてから、二つ目のタスクを始めます。そして二つ目のタスクを終わらせてから、三つ目のタスクを始めます。この仕事のやり方をシングルタスクと呼びます。複数のタスクを同時にこなす仕事のやり方をマルチタスクと呼びます。仕事のつまみ食いをして、仕事のの途中で別の仕事に切り替える仕事のやり方です。

タスクを切り替える頻度が高いことと、生産性の低さには相関関係があることが明らかになっています。つまりマルチタスクをすると、集中力は下がるし、生産性が低くなるのです。一見いろいろな事を同時にこなす人は仕事ができように見えますが、実際には仕事ができていないのです。

マルチタスカーは外部からの影響に邪魔をされやすく、気が散りやすい傾向があります。思いついたことなど、自分の思考によって仕事を邪魔されたり、外部の刺激によって邪魔されたりするのです。

マルチタスクから解放されるには、一つの仕事を完了してから他の仕事に移るようにする必要があります。そうすることで、仕事の生産性が上がり、仕事に遅れることが少なくなるというわけです。

計画の錯誤

心理学者ダニエル・カーネマン氏による研究で、計画が予定通りに実行できない原因について

「時間や予算など計画完遂に必要な資源を常に過小評価し、遂行の容易さを過大評価する傾向がある」

と結論付けています。人間は物事を実行するときに、リスクを過小に評価する傾向があり、かつリウォードを過大評価する傾向にあるということです。

例えば遅刻の常連の社員の行動を例に考えてみましょう。朝起きたら、いつもよりも15分遅い時刻で、目覚まし時計をセットし忘れていました。しかし何とかなるだろうと、いつも通りに朝食をゆっくりと食べて、いつもよりも遅めに家を出ました。

そしていつもよりも遅れて電車に乗りましたが、順調に乗り継げば間に合うはずと高を括っていました。しかし電車の乗り換えはスムーズにいかず、結局会社に遅刻してしまいました。

さてこのストーリーの中でリスクを過小評価したのは、目覚まし時計をセットし忘れたことです。そしてリウォードを過大評価したのは、電車を順調に乗り継げば間に合うと考えたことです。

自宅を出てからどれくらいで会社につくのか、データに基づく冷静な判断が必要です。自分勝手な思い込みではなく、具体的なデータで計画の精度を確認しなければならないのです。

明らかに自宅を出てから会社に着くまでに掛る時間を少なく見積もっています。このような計画を遂行するために掛る時間の見積もりの甘さを「計画の錯誤」と呼びます。遅刻常習犯の中には計画の甘さが原因の人もいるということです。

計画の錯誤を改善するには、遅刻に至る行動に掛る時間をより正確に見積もるように指導する必要があります。例えば会社に来社するまでの行動を全て書き出し、各行動にどれくらいの時間が掛るか正確に見積もりを出させるのです。

体内時計のズレ

マサチューセッツ大学心理学・脳科学教授のクラウス・ホワイトボーン氏によると、遅刻は体内時計のズレによるのかもしれないと語っています。2016年に行われた研究で、遅刻の常習の原因は「時間ベースの展望記憶」(TBPM)が原因の一つであることが分かっています。

参加者にジグソーパズルなどの課題を与え、一定の時間内でそれを終えるように伝える。ここで作業を完了させるためにはペース配分を考えなければならない。参加者には作業中、時間を確認する自由が与えられた。しかし、実験では参加者が作業に没頭するため、時間を確認する可能性は薄い。

体内時計のずれが原因で遅刻をするのであれば、時計を頻繁に確認するという対策をすることができます。例えばスマートフォンで時間を確認するのではなく、腕時計を付けて、すぐに時間を確認できる環境を整えるなどです。

朝目覚めときに日光のような強い光を浴びると、体内時計がリセットされることが明らかになっています。体内時計のズレを修復するために、朝に強い光を浴びるのも効果的かもしれません。

また三食を規則正しく食べることも、体内時計のズレの修復に効果的です。特に朝食を食べることで体内時計がリセットされることが分かっています。

タイプBの性格

人間をタイプAとタイプBの二つに分類すると、タイプAの人は成果主義で時間の認識が正確で、タイプBの人はのんびりタイプで時間の認識が甘いという研究結果がでています。マサチューセッツ大学心理学・脳科学教授のクラウス・ホワイトボーン氏によるとタイプBの人は実際の時の経過よりも少なく見積もる傾向があることが明らかになっています。つまり実際に過ぎた時間よりも少なく時間の経過を見積もるので、仕事に遅刻するというわけです。

タイプBの人はのんびりとした性格のため、共感性が低く、悪く言えば鈍感という性格の持ち主です。遅刻して相手に不快な思いをさせてしまっても、相手の感情に共感できないため、悪い事をしたという感情が持てないのです。

ハーバード大学の研究で1日20分の瞑想を8週間くらい続けると共感能力を上げる効果があると分かっています。また読書などで他の人の立場を自分の立場に置き換えて想像するのも効果的です。

遅刻をされた側がどんな気持ちになるのか、遅刻をされたときに怒っていたら、自分ならどんな時に怒るのかなとを想像させるのです。相手の立場を自分の立場として感じる能力を鍛えることで、共感能力が高まります。

怒り方と叱り方

報酬と罰(アメとムチ)

人が行動を変えるためには、報酬(アメ)あるいは罰(ムチ)のどちらかが必要です。

報酬(アメ)

遅刻をしないで、時間どおりに行動をしても、何のメリットもないとしましょう。すると遅刻をしないように行動する気になりません。

罰(ムチ)

遅刻をして、時間どおりに行動をしないことで、デメリットがないとしましょう。すると遅刻をしても、何の支障もありません。

強化の法則

心理学用語に「強化の法則」というものがあります。一般的には「アメとムチ」と呼ばれているものです。望ましい行動をしたときに誉めるなどの報酬を与えて、望ましくない行動をしたときに叱るなどの罰を与えることです。

それでは「アメ」と「ムチ」のこちらがより効果的なのでしょうか?結論から言うと、行動を増やす場合にはアメを与え、行動を減らす場合には罰を与えるとより効果が上がります。

報酬(アメ)の効果

ニューヨーク州立病院で看護師などの職員に実験が行われました。病院で手を洗う行動を促すために、報酬を与えるのと、罰を与えるのと、どちらが効果的かを検証しています。

まずは罰の効果の検証です。手洗い場に手を洗わないことによるデメリットを訴える「警告メッセージ」を置いた場合です。心理学的にネガティブサインと呼ばれています。実験では職員の10%しか改善が見られませんでした。しかも監視カメラを設置していることを告知しても効果がなかったのです。

次に報酬の効果の検証です。手を洗うと、手洗い場に「Good job!」というサインが出るという報酬を用意しました。心理学用語でポジティブサインと呼ばれています。すると罰を与えたときよりも3倍の効果があったのです。人間は楽しいことが起きると、ドーパミンが出て、脳が刺激されるのです。

罰(ムチ)の効果

ワシントン大学で行われた実験です。学生にミスをしないように単純作業をしてもらいました。ヘッドフォンの右と左のどちらから音が出たか、あるいはパソコンのモニターの右と左のどちらが光ったかなどを当ててもらったのです。

正解するたびに、5セントあるいは25セントの賞金がもらえます。。外したら、同額の罰金を払わされます。すると報酬も貰った場合よりも罰金を払った場合のほうが3倍も効果的だったのです。

罰は軽くても、人間の脳に大きく反応します。つまり罰の厳しさにこだわる必要はありません。

遅刻をやめさせるには報酬(アメ)と罰(ムチ)のどちらが有効か?

遅刻の回数を減らすことが目的なので、報酬(アメ)よりも罰(ムチ)のほうが効果的ということになります。

怒ると叱るの違い

まず「怒る」と「叱る」の違いについて考えてみましょう。「怒る」とは怒りの感情をぶつけることです。「叱る」とは相手の行動を望む方向に導くことです。

相手の行動を望む方向に導くには、決して怒りの感情をぶつけてはいけません。怒りの感情は相手に不快感しか与えません。一番悪い行動は長々と怒ることです。叱ることが重要なのです。

叱り方

それではどのように叱るのが一番心理学的に効果があるのでしょうか?なるべく短く、淡々と叱ることです。そして一番重要なのが、悪い行動をしてから叱るまでの時間です。

悪い行動をしたときに、すぐに叱るのです。3分以内が理想的です。遅刻をしたときに、すぐに叱らないと効果が低いです。時間が経てば経つほど、叱責の効果は低くなります。

マウスの実験では「強化の法則」が成り立つためには、報酬あるいは罰を30秒以内に与えると効果的という結果が出ています。人間の場合には30秒ではなく、3分くらいの時間で構いません。

それでは叱るときの内容はどうすればいいのでしょうか?それは遅刻した原因によります。ますは冷静に相手と話し合い、何が原因で遅刻しているのかを探りましょう。

遅刻の原因が、「マルチタスク」、「計画の錯誤」、「体内時計のズレ」、「タイプBの性格」のいずれに当たるのかを判断する必要があります。そして個々のケースの改善方法は各項目のところで触れています。

遅刻の言い訳

YAHOO JAPAN!ニュースに掲載されていた遅刻常習事犯の言い訳を紹介します。

「待ってる時間は適当に過ごしてて欲しい」

「あと何分で着くか聞かれるけどとりあえず100%到着するのは確実なので安心してほしい」

一方時間厳守派の言い分も紹介します。

「遅刻して待ってる時間は他人の時間を奪ってると認識してほしい」

「遅刻しないように逆算して行動してほしい」

「遅刻しないことは当たり前のことで遅刻常習犯は当たり前のことができないくせに偉そうにしないでほしい」

「時は金なり」

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